介護の仕事とプライベートの両立に苦労して、悩んでいる方も多いのではなかろうか。もちろん、教員から介護職へ転職した私も、最初は苦労した。私と妻の間に子供はいないので、比較的プライベートの融通が利くけれど、子供ができたらそうもいかないだろう。
今の介護施設は、夜勤がある。教員時代は夜勤はなく、あったとしても予習のための数時間の夜更かしくらいだった。夜勤明けは、だいたい寝て過ごしている。朝9時に帰宅し、そこから12時まで仮眠して昼ご飯を食べ、数時間の自由時間を経ていつも通りの時間に就寝する。夜勤をしはじめてからというもの、妻と話す時間が減ってしまった。また、夜勤明けはどうしてもぼーっとしてしまい、慣れるまでは大変だった。妻は、「あなたが一生懸命頑張っているのならそれでいいのよ」と言ってくれる。おかげで、私達の間に変な蟠りは生まれていない。良き理解者の存在は大切だと改めて思う。夜勤明けに妻の相手ができない分、休みの日は一緒にいる時間を大切にしている。家族がいて仕事とプライベートの両立ができずに悩んでいる方は、家族とよく話し合ってみると良いのではないだろうか。
家族との時間以外にも苦労があった。それは、趣味の時間の確保である。私の趣味は旅行だ。教員時代はまとまった休みがあると、よく旅行へ行っていた。しかし、現在の介護職にはまとまった休みはない。最初はなかなか旅行に行けずに悩んでいた。そんなとき、妻が「旅行に行けないなら、別の趣味を見つければ良いじゃない。例えば、読書とか。そうだ、これを貸してあげる」そう言って私に手渡したのは、幸田露伴の「五重塔」だった。それ以来、私は読書にどっぷりハマってしまった。教員時代は学術書しか読んでおらず、文学を嗜む時間がなかった。読書ならいつでも空いた時間にできるため、不規則に働く介護職にもピッタリだ。
かくして私は介護職に纏わる苦労を幾度と無く乗り越えてきたわけだが、それは妻の存在があったからこそだ。介護の仕事とプライベートの両立は難題だが、学校の難しい数学の問題にも答えがあるように、必ず解決への糸口がある。元数学教師が言うのだから、間違いはない。
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